2016/03/12

龍安寺の英訳 -京都府-

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今回の記事は……






世界文化遺産 龍安寺 です。


この龍安寺を採り上げた理由は、この寺院が前回の記事で採り上げた北野天満宮から電車に乗ってすぐの所にあるからです。(同日に参拝しました。)

そして、この龍安寺の最大の魅力が……




禅の世界を感じられる方丈庭園、いわゆる 石庭 です。

境内には大きな池、鏡容池がありますが、方丈(禅宗寺院における僧の居室、ここで石庭が見られます)自体はそこまで大きくはありません。

この石庭は国内外問わず多くの観光客の方が見に来られており、大人気です。(上の石庭の画像を撮影する際も、観光客の方が映らない角度を探すのに、少し苦労しました……。) 


ここ龍安寺は臨済宗妙心寺派の寺院、いわゆる禅寺であり、この石庭は通称「虎の子渡しの庭」や「七五三の庭」とも呼ばれ、禅の精神、心を表す庭として有名です。


では、まずは龍安寺の歴史に触れておきます。


徳大寺家の別荘だったのを、宝徳2年(1450)管領細川勝元が譲り受けて寺地とし、妙心寺の義天玄承を開山として創建されたものである。
応仁の乱に焼失して、明応8年(1499)、勝元の子、政元が再興したが、寛政9年(1797)火災で方丈・仏殿・開山堂などを失った。
現在の方丈は、そのとき西源院の方丈を移築したものである。
方丈の前庭は枯山水の石庭として著名で、臨済宗妙心寺派に属し、大雲山と号し禅苑の名刹である。
(引用:龍安寺リフレット)


世界文化遺産として登録されていますが、過去に2度の火災に遭っているとは知りませんでした……。


続けて、石庭についても触れておきます。


この石庭は、東西25メートル、南北10メートルの空間に白砂を敷き詰め、15個の石を配したものです。
極端なまでに象徴化されたこの石庭の意味は謎に包まれており、見る人の自由な解釈に委ねられています。
室町末期(1500年ごろ)、特芳禅傑などの優れた禅僧によって作庭されたと伝えられています。
また、石庭は菜種油を混ぜた土で造られた油土塀によって囲まれ、時の経過による油の変化が独特な風合いを醸し出しています。
(引用:龍安寺リフレット)


「虎の子渡しの庭」や「七五三の庭」という解釈が殊更有名ではありますが、石庭の表現している意味というのは予め定められているものではなく、自分自身で解釈しなければならない……これをお読みいただいている皆さんは、この無作為に散りばめられた石と綺麗に整えられた枯山水に何を感じるでしょうか。 



ではでは、龍安寺の英語表記を見ていきます。




龍安寺のリフレットは、日本語表記と英語表記が一枚のリフレットに記載されており、英語表記は
RYOANJI TEMPLE となっていました。(また全部大文字表記ですね……。)

注目させたいのでしょうか、それとも私が小文字表記の方が読み易いと勝手に思っているだけで、英語話者の観光客にとっては、どちらでも変わらないのか……。

完全にイコールではありませんが、平仮名かカタカナか、どちらの方が読み易いかに近いと思います。


では、書籍における英語表記を見てみます。


①:Ryoan Temple
(広瀬 直子著 『1分間英語で京都を案内する』 2014年)

②:Ryoan-ji
(ジョン・モリス英文翻訳 『楽しく歩ける!楽々わかる!英語対訳で旅する京都』
2014年)

③:Ryoan-ji Temple
(ジョン・ハワード・ロフタス翻訳 『英文 日本絵とき事典5 MUST-SEE IN KYOTO』
2009年)

④:Ryoan-ji Temple
(伊藤 通子著 澤井 雅子英訳 『英語で伝える日本』 2006年)

⑤:Ryoan-ji
(佐藤 静也著 『SHRINES AND TEMPLES OF KYOTO:An English
Guidebook with a Virtual Bus Tour』 2001年)



書籍の英語表記はやはりローマ字表記が基本となっていました。

「龍が安らぐ寺」なんて解釈をすると、「Temple of the Dragon's Relaxing」なんて英語表記も出来なくはないですが、これはあり得ないですね。


では、ウェブサイトの英語表記を見てみます。


⑥:Ryoanji Temple

⑦:Ryoan-ji (Hojo Temple Garden)

⑧:Ryoan-ji

⑨:Ryoanji Temple

⑩:Ryoanji Temple


ウェブサイトの英語表記でも、ローマ字表記が主流であり、Temple of the Dragon's Relaxing とは表記されていませんでした……。

このことからも、いかに金閣寺・銀閣寺の Temple of the Golden Pavilion・Temple of the Silver Pavilion という英語表記が特殊な英語表記であるか、また、この様な英語表記が可能である条件は、名前の由来が目に見えるか否かである という点がお分かりいただけるかと思います。

おそらくですが、堅苦しく文章に起こさなくても、無意識の内に理解していることかと思います。


では、次は石庭の英語表記とそこに用いられている枯山水の英語表記について見てみたいと思います。


ちなみに、枯山水とは……

枯山水は水のない庭のことで、池や遣水などの水を用いずに石や砂などにより山水の風景を表現する庭園様式。例えば白砂や小石を敷いて水面に見立てることが多く、橋が架かっていればその下は水である。石の表面の紋様で水の流れを表現することもある。
(引用:枯山水Wikipedia)

ざっくりと理解するならば、水を使わずに水を表現している庭とでも言いましょうか。


金閣寺や平安神宮などの池泉回遊式庭園、いわゆる水を用いた庭園と、ここ龍安寺や建仁寺など禅宗寺院で多く見られる枯山水は、正反対の技法ですが、どちらの様式の庭も京都の名庭園として有名です。

当然、日本独自の技法なのですが、どの様に英語表記されているか見てみたいと思います。

※石庭の英語表記 / 枯山水の英語表記 の順番で採り上げます。上記で採り上げた出典に関しては書籍名のみ、ウェブサイトの場合はリンクは付けていません。


⑪:石庭の英語表記なし
   It represents nature without using any water
(『1分間英語で京都を案内する』)

⑫:rock garden
  the karesansui garden (which uses only sand and rocks)
(『楽しく歩ける!楽々わかる!英語対訳で旅する京都』)

⑬:Rock Garden
  Dry Landscape Garden
(『英語で伝える日本』)

⑭:sekitei (Zen Rock Garden)
  枯山水の英語表記なし
(槇野 修著 『対訳 寺社を歩けば京都がわかる』 2010年)

⑮:石庭の英語表記なし
  dry landscape garden
(マーティン・ピディントン&ステュワート・ワックス監修 『気軽に英語でおもてなし
in Kyoto』 2008年)

⑯:rock garden
  枯山水の英語表記なし
(japan-guide.com)

⑰:rock garden
  枯山水の英語表記なし
(Lonely Planet)

⑱:Zen rock garden
  karesansui (dry landscape)
(JapanVisitor)



8つ程の出典から、英語表記を採り上げてみましたが、意外と石庭と枯山水の一方しか表記していない出典もありました。


ところで……




こちらが龍安寺でいただける御朱印です。(何気にこのブログで御朱印を載せるのは初めてかもしれません。)

御朱印を見ると、中央に大きく石庭と書かれています。

私は、石庭というのは一種の固有名詞という認識を持っていましたが、単に石を用いた庭という意味の普通名詞という認識も出来ますね。

sekitei というローマ字表記以上にrock garden という英語表記が多く見受けられるのはそのためかと思います。


枯山水に関する英語表記は dry landscape という表記と、⑪と⑫のような説明的表記とが見受けられました。

水のない(dry)風景(landscape)となりますが、解釈次第では乾燥した砂地、砂漠のような風景という解釈も出来なくはありません。

龍安寺の石庭の写真を見ていない外国人観光客に dry landscape と言っても、果たして枯山水を思い浮かべてくれるでしょうか……?(全くの情報・知識0の状態で、龍安寺を訪れる外国人観光客がいるとは考えにくいですが。)

実際、Google で dry landscape の画像を検索してみると、枯山水の画像も見受けられるのですが、多くは干ばつで水分を失った大地の画像でした。


ただ、ここまで dry landscape という表記が多いことを鑑みると、枯山水= dry landscape というのは、観光地を紹介する英語という限定されたジャンルの中では常識なのかもしれません。 

しかし、こういった書籍やウェブサイトは読み手にとって魅力的、心を惹き付けるものであるべきで、そこに誤解を生じさせてはいけないと思います。

dry landscape という表記だけでは誤解が生じる可能性があるなら、⑪や⑫のような表記も併せて載せるべきだと私は思います。





Ryoanji Temple is one of World Cultural Heritage Sites in Kyoto.
This temple is very famous for Zen rock garden "Sekitei" and the garden represents nature without any water.
We Japanese call this style garden "karesansui" and you can see other karesansui gardens in many Zen temples, but that of Ryoanji Temple is the most famous in Japan, I think.

A few rocks are placed with ease and many pebbles represent sea waves.
You will feel loneliness, simpleness and so on, but this is one of Japanese beauty senses.
The meaning of this garden is not defined exactly, it depends on your senses, feelings…What do you feel this rock garden?

Ryoanji Temple belongs to Rinzai Sect, that is, it is a Zen temple.
Few people in Japan may be able to explain what Zen is. 
It is abstract, but some people feel Zen from this simple garden.
I think Zen is not only one, many Zen exist inside you.
I want you to visit Ryoanji Temple and meditate deeply with seeing the rock garden.


禅とはとても一言では言い表せないほど抽象的で、魅力的なものです。

なかなか禅とはこういうものだ!と断言することは出来ませんが、ここの石庭を見て物思いに耽ると、何か心に浮かんでくるものがある……かもしれません。

多くの観光客が訪れる寺院なので、静かに一人きりで石庭を楽しむのは難しいかと思いますが、是非訪れていただきたいオススメの寺院です。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。



-Good English, Good Japan-  
  
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