2015/11/08

伏見稲荷大社の英訳(2) -京都府-

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続けて伏見稲荷大社の記事となります。












様々な伏見稲荷大社の英訳を載せました。


お分かりの通り、載せた画像は全て伏見稲荷大社付近に設置されている標識や案内板における英訳です。

それぞれの英訳を比較すると、細かいものですが違いが見受けられます。


・Fushimi Inari Shrine
・Fushimi-inari taisha shrine(Fushimi-Inari Taisha Shrine)
・Fushimiinari-taisha Shrine
・Fushimiinari Shrine(FUSHIMIINARI SHRINE)
・Fushimi-inari-taisha Shrine



大文字小文字の違いを除けば、標識・案内板における伏見稲荷大社の英訳は5種類存在しています。


上の7種類の標識・案内板は当然伏見稲荷大社の近辺に設置されていますが、一つの英訳対象に対していくつもの英訳が存在する日本の言語景観...不思議だとは思いませんか?


今回の記事では、この日本の言語景観について少し触れたいと思います。


言語景観とは...

公共空間で目にする書き言葉を指している。これに相当する英語の「linguistic landscape」は、カナダの社会言語学者R.LandryとR.Y.Bourhis(1997:25)が「特定の領域あるいは地域の公共的・商業的表示における言語の可視性と顕著性」と定義している。
(引用:庄司博史、P・バックハウス、F・クルマス編著 『日本の言語景観』 2012年)

※引用文中の(1997:25)とは、R.Landry氏とR.Y.Bourhis氏が1997年に著した論文の25ページから引用したという意味です。


こう説明されても、スッとは理解できないかもしれませんので、もう一人の言語学者ダニエル・ロング氏の言語景観の定義を引用しますと...


1:文字言語(看板や店に並ぶ商品のラベルなど)であり、音声言語(その商品のためのラジオCMや電車内のアナウンスなど)ではない。つまり、言語景観は視覚的な情報であり、聴覚的な情報ではない。

2:公的な場に見られる文字言語(店舗のショーウィンドーにある看板)であり、私的なコミュニケーション(個人間で交わされる手紙や電子メール)ではない。

3:不特定多数の読み手に発せられる物(商店街のポスター)であり、特定の個人宛てに書かれた物(自宅のドアにテープで張られた言付け)ではない。

4:自然に、受動的に視野に入る物(駅売店の雑誌の見出しに使われている語句)であり、意図的に読まなければならない物(その雑誌の中の記事)ではない。

(引用論文:ダニエル・ロング 奄美ことばの言語景観 2010年)


ダニエル氏の言語景観の定義もLandry氏とBourhis氏の論文を踏まえた上でのものでしょうが、ダニエル氏の定義の方が馴染みのある例も採り上げられていて、分かりやすいのではないでしょうか。


初めの7つの標識・案内板の画像は、日本の言語景観の不統一さを見ていただくために載せましたが、伏見稲荷大社を英訳する場合、どの英訳がベストなのかを少し考えてみたいと思います。

まずは、伏見稲荷大社という名前を意味の分かる単語に分解してみたいと思います。


・伏見・・・地名。「伏水」とも書き、伏流水が豊富な水郷地であったことを示す地名か。また宇治川の水が「伏し湛える」土地の意とする説もあるという。

・稲荷・・・神様。五穀をつかさどる食物の神、倉稲魂神(うかのみたまのかみ) のこと。また、倉稲魂神を祭った、稲荷神社。
(デジタル大辞泉)

・大社・・・きわめて大きな神社や、由緒ある名高い神社。
(デジタル大辞泉)


伏見稲荷大社を細かく分けてみましたが、言葉の区切りを明確にすれば、

「伏見 / 稲荷 / 神社」

と、なります。

この単語の区切り方に則ってローマ字表記しているのは




以上、3つの英訳ですね。(ハイフンとスペースはどちらも単語毎の区切りを表すものとして考えました。)

この3つ以外の英訳を見てみると、「伏見稲荷 / 大社」という単語の区切り方となっていますが、一概にこの単語の区切り方が悪いとは言い切れません。

伏見稲荷大社の傍に京阪電鉄の伏見稲荷駅という駅があるので、伏見稲荷で一単語として認識されてもおかしくなく、むしろ自然です。

ここで問題なのは、単語の区切り方が正しいかどうかではなく、


近辺にこれだけの異なる表記が点在している状態、つまり、日本の英語表記に対する姿勢に問題があると考えています。

2020年に東京オリンピックが開催されることが決まり、一層多くの外国人観光客が来日することが見込まれます。

日本の国土交通省は、公共の場での様々な英語表記の改善をガイドラインとして出しているものの、外国人観光客の人気No.1の観光地ですら現状この通りです。


公共英語なので、なにも観光地にある標識や案内板だけではなく、駅や周辺の飲食店や土産物屋など多言語環境、特に英語表記を整えなければならない箇所は山ほどあります。
2020年まで後5年足らずですが、果たして日本の公共英語表記の改善は間に合うのでしょうか。

「O・MO・TE・NA・SHI」はできるのでしょうか...。




今回は伏見稲荷大社を題材に、少しテーマを変えた記事を書きました。

神社仏閣の写真もなかったので、少々退屈だったかもしれません。

申し訳ないm(_ _)m




言語景観が整った日本を目指して…





-Good English, Good Japan- 
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